福岡気功の会 山部嘉彦先生による「正体術」実践解説
〈プロフィール〉
1947年札幌生まれ。
78年に野口整体、84年に気功と筋診断に出会い、心身技法の世界に入る。
86年に福岡気功の会を設立。気功を研究し、自立と普及を目指す。
また筋診断研究会の会長として、経絡色体による家庭治療「筋診断」の研究指導も行う。
正体術について
正体術は高橋迪雄先生が作られた自己調整法です。
高橋先生の父親の代から研究を始められました。
動物の骨格を用いて実験を重ねられて、その構造を理解していきました。
明治時代から療術や健康術は海外からの影響があり、
カイロプラクティックやオステオパシー、メスメリズム、
スポンデロテラピーなどを取り入れた和洋折衷のものが多かったのですが、
この正体術は完全日本オリジナルの健康法です。
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膝を縛り、ぐっと手を加えるように膝を引くことで、尻の肉が締まり、痔の治癒に役立つ
正体術の療術に与えた影響は大きく、野口整体の体癖体操や矯体法、
橋本敬三先生の操体法はその原理を取り入れて作られました。
『正体術矯正法』を現代語訳した『正体術健康法』の現代訳者、鈴木正教は
野口晴哉の師匠桑田道教の教団に属し、そこに伝わる正体術を学びました。
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自然に坐った背中を見れば、体の歪みが分かる
正体術は全身に均一に力を入れる正体術と体のゆがみを矯正する正体術矯正法があります。
正体術矯正法はまず観察から入ります。
正座や立位、仰向け、うつぶせの姿勢でおこないます。
左右どちらに重心があるか、背骨のゆがみ、背中の幅や厚み、
骨盤の高さや殿筋の張弛、足首の太さを見ます。
その観察にもとづいて体操を設計していきます。
重心のある側は体が縮みやすく、反対側は伸びやすいです。
重心側の足首は太く反対側は細いです。
また肋骨の厚みに左右差があると、睡眠に関連し眠れなくなります。
矯正法は季節や年齢、体力などを考慮して、
夏など暑くて筋肉がゆるんでいるときは矯正法の数を少なくして、
寒い時期は矯正法の数を多くします。
また年配の方はゆるやかな刺激の矯正法を行います。
また各種職業による歪みのパターン、歪みが性格や気質に与える影響など
矯正法を行う際にはいろいろと考える必要があります。
足首を引き締める方法
術者は受け手の親指の腹に指を当て、受け手に指を押すように指示し、
押し合って力が十分に感じられたら急に力を抜きます。
足首の太さを確認します。
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慢性胃病の女性の足。右足に座りダコができていて、
いつもこの足の部分にのみ全身の重さがかかっていたことが分かる
産後の骨盤を締める方法
仰向けに寝てもらい、股関節を屈曲して、引き寄せ、
5秒ほど保持して急に力を抜いて足を床に落とします。
足をのばします。
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骨盤がだいぶ開いている
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産後の弱った体でも負担が少ない、骨盤を締める矯正法
山部先生による「高橋正体術」紹介・実演
ここでは、高橋迪雄の「高橋正体術」をご紹介します。
高橋迪雄は大正から昭和初期にかけて活躍した体育家として知られています。
彼は正体術を完成させましたが、その死とともに忘れ去られてしまいました。
しかし、正体術矯正法は、野口整体術や橋本操体法として今日まで引き継がれています。
「体がすっかり歪んでしまったら、正体術の効果があがりませんので、
矯正法で整えてやり、この先はご自分で正体術をして健康を維持しなさい」と高橋は指導したわけですが、
皮肉にも矯正法の方が受け入れられて、相当繁盛したようです。
けれども高橋自身は正体術の普及をずっと望んできて、昭和10年にその決定版を出版しました。
その薄い小さなパンフレット(『正体術』)と、
矯正法の合冊本(『正體術矯正法』)は、たにぐち書店から復刻されています。
私自身、正体術を随分と研究してきましたが、緊張を高めて集中させ、一気に脱力させる技術、
それと呼吸を合わせる技術を利用すると、一層効果が高められることに気付いて、
これに「気の正体術」と名付けました。
ではこれから、横になって寝転んで行う正体術2種と、立って行う正体術をご紹介します。
まずうつ伏せになって骨盤の高さを整える前段矯正を行います。
その後、2種の仰向けで行う正体術と、立って行う「きをつけ」の正体術をご紹介していきます。
[正体術の関連書籍]